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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'03.13.Thu
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2012'02.21.Tue
「嫌?」

いらえの代わりにぷるぷると首を振ると、次屋はわずかに微笑んだ、ように見えた。首元に顔をうずめるように、寝巻き姿の時友を緩く抱きしめる。たったそれだけでどきりと心の臓が飛び跳ねた。同年代の友人にはうぶだ、などと揶揄されるが、こんなにも愛しい人の体温を感じて、どきりとしないのはどんな優秀な忍者なのだろう。

しろべえ、甘えるような声色に肩を揺らし、ゆっくり息を吐く。きっちりと忍び装束を着こんだ次屋は、その下に今日は何を仕込んでいるのだろうか。暗器の得意な体育委員長殿は。

冷たい唇が頬を滑る。思わず身をよじると逆に引き寄せられ、そのまま唇を吸われた。冷え切った体に反して熱い息が唇を舐め、ぬるりと舌が差し込まれる。暴かれる。次屋に縋りつくように応えながら、じわりと汗が浮くのを感じた。唇も。歯も。舌も。もう知っている。それでも、何度しても慣れるものではなく、何度となく、次屋は時友の気持ちを確かめた。

好きだと言えばいいのだろうか。

本当にそうであるのかがわからない。唇は熱くとも、次屋の体はかたく、重く、冷たい。時友を抱きしめるだけの手は、今日は何を引き寄せるのだろう。

何度も繰り返される口吸いにどんな意味があるのか、今日もついぞ聞くことができないまま、時友は次屋を見送った。背の高い男は頭巾で顔を覆うともう気配を変え、時友を振り返ることはない。月のない夜を行こうとする背中を、今日はどうしてだかそうしたくなり、縁側を降りて袖を引いた。僅かに肩を揺らして次屋は足を止める。

「あの」

「……ん?」

「ぼくは、次屋先輩が強い方だと知っています」

「おお、ありがとな」

「ですから、どうしたらいいのかわからないのです」

「……じゃあ、待ってろ」

袖を掴む時友の手を取り、次屋はそれを握った。決して強くない力でも、心をつなぎとめられる。視線を落としてそれを見ると、次屋の指がつう、と甲をなぞった。

「帰ってきたら、今度はちゃんと抱きしめる」

時友が顔を上げると同時に、次屋は走り去っていた。見慣れた背中を見送りながら、体温も残っていない手を握る。

「そういうことじゃなくて……」

手のひらを見た。これは忍者の手だろうか。

「……ん?」

自分は何が欲しいのだろうか。それがわからなくなって首を傾げる。足元から体が冷えて、時友はゆっくり長屋へ向かった。

抱きしめてもらえばわかるだろうか。
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