言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2013'12.20.Fri
あ〜……他のとこではどうだか知らねえけど、オレらの村では、誰かとすれ違うときは必ず挨拶をしろって躾けられてた。特に夜は、誰かとすれ違うときは必ず挨拶をしろって、耳にタコができるぐらい言われてた。言われなかったか?
オレらの村では子どもも労働力だった。暗くなってからでも畑に野菜を取りに行くなんてざらにあることで、母ちゃんたちも遠慮なく子どももこき使ってたんだ。
どこの家もそうだし、オレだって、そりゃめんどくせぇなぁと思うことはあるけど、言いつけサボるとすぐに飯抜きだもんな。
その日も、晩飯の支度してる母ちゃんの代わりに畑に野菜取りに行ったんだ。途中で近所のオッサンに会って、いいものが取れたからって野菜を取りに来るように言われた。何だったか忘れたけど。かぼちゃかなんかじゃねぇかな。まぁそれはどうでもいい。
だからさ、自分ちの畑に行って、一回帰るのめんどくせぇから、そのままオッサンちに行って、それから家に向かう頃には随分暗くなっていた。
多分その日は月もなかったんだ。辺りは本当に真っ暗で、慣れた道じゃないと歩けないぐらいだった。まあそんなに遠い距離でもなかったし、夜が怖いなんて思ったこともなかったし、何も気にせず野菜を抱えて家に向かった。
歩いてると、誰かの気配がした。前の方に誰かがいる。月はなかったけど、星明りでそれぐらいはわかった。
だからこんばんは、って挨拶したんだ。声を聞けば誰だかわかるから。
そうしたら、返事がなかった。
村の人間なら、必ず挨拶を返すはずなんだ。今まで返されなかったことなんてなかったし、村には偏屈なやつもいなかったから。
それが誰だかわからないけど、とにかくすっげぇヤバい気がした。第六感ってーの?ぞくっと鳥肌が立って、オレはその誰かさんのそばを走り抜けた。隣を通るときに捕まるんじゃないかって思いで頭がいっぱいでめちゃくちゃ怖かったけど、その時は大丈夫だった。
その時は、な。
通り過ぎて、ほっと息を吐こうとした瞬間だった。
生臭い匂いが漂って、背後で荒い息が聞こえた。
やばい、やばい、やばい!ってオレは焦って、必死で足を動かした。多分その間に手に持ってた野菜なんて投げ捨ててたんだと思う。もうめちゃくちゃに走って、もしかしたら何か叫んでたかもしれないけど、近所から誰かが出てくることはなかった。
後から考えたら、これもおかしいんだよ。まだ日も落ちたばかりだからどこの家も寝てるはずがないから、家には明かりがついているはずなのに、そんなものは何も見えなかったんだ。
ただ、自分ちの明かりは見えた。
まだ背後から何かが迫ってくる気配はある。まっすぐ家に飛び込んで、その気配を絶対に中に入れないようにドアを叩きつけて閉めて、勢いのまま弟を探して捕まえた。弟はビビッて泣き出したけど、多分オレもその時もう泣いてたと思う。弟を捕まえて母ちゃんに抱きついて、驚いてる父ちゃんにも必死で訴えた。多分何も伝わってなかったと思うけど、オレも何を言おうとしてたのか覚えてない。
――ドンドンドン!
ぼろいドアが外れるんじゃないかってぐらいの勢いで、ドアが叩かれた。オレは飛び上がって、ドアに向かおうとする父ちゃんを必死で引き留めた。
――ドンドンドン!
――ドンドンドン!
始めは村の誰かだと思っていた父ちゃんも、すぐにおかしいということに気がついたのか、オレを抱いて母ちゃんたちと一緒に丸くなった。
だって、村では誰もドアに鍵なんてかけないんだよ。そもそもオレの家にはなかったし。
だから、もし何か緊急事態だとしても、こんなにノックを繰り返す必要はないんだ。
どれぐらいかわからないけれど、オレも弟もとにかく泣きじゃくっていた。母ちゃんや父ちゃんが身動きするのも怖くて、次の日見たら手のひらに爪の跡がくっきり残ってた。
ずっと続いていたノックが止まり、それでもオレたちはまだひと塊になっていた。誰も何も言わないままだった。
それでも、あの怖いものは去ったんじゃないか、と油断した頃、今度は家ごと大きく揺れた。何の音かわからないけど、とにかくでかい音だった。
家がボールみたいに跳ねてるんじゃないかってぐらいに大きく軋んで揺れ続け、オレたちはまた泣き叫んだ。
それは多分一晩中続いてた。もうぜってぇ家ぶっ壊れて、オレら全員食われちまうんだって思ってたけど、家は無事だったしオレたちはひとりも食われなかった。
家が揺れなくなって、窓の外がすっかり明るくなってから、母ちゃんがオレらを抱きしめて、父ちゃんがドアを開けに行った。恐る恐る、オレたちは息を飲んでドアの外を見たけど、そこはいつも通りの風景が続いているだけだった。
そこでようやく、父ちゃんに何があったのかを聞かれて、オレも何があったのかを思い出した。すれ違った誰かの話をして、父ちゃんとオレで畑までの道を一緒に戻ってみることにした。
あの変な気配に会ったのは多分この辺りだ、と思ったところに、動物の死体があった。
それが、変なんだよ。大きさはイタチぐらいだったんだけど、イタチじゃねえし、とにかく、オレらが知ってるどの動物とも違った。
オレと父ちゃんはその動物をちゃんと葬った。あいつがオレらに何をしたかったのかはわからないけれど、自然のものなら自然に返すのはいいからな。
あれから同じものに会ったことはない。違うものにも会ってない。しばらくは夜ひとりで出歩くのは怖かったし母ちゃんたちは無理強いしなかったけど、兄弟が増えてくるとそういうわけにもいかないしな。
オレはずっと、暗闇で会った人には挨拶をすることを続けている。声さえ聞けば、それが誰かわかるからな。
オレらの村では子どもも労働力だった。暗くなってからでも畑に野菜を取りに行くなんてざらにあることで、母ちゃんたちも遠慮なく子どももこき使ってたんだ。
どこの家もそうだし、オレだって、そりゃめんどくせぇなぁと思うことはあるけど、言いつけサボるとすぐに飯抜きだもんな。
その日も、晩飯の支度してる母ちゃんの代わりに畑に野菜取りに行ったんだ。途中で近所のオッサンに会って、いいものが取れたからって野菜を取りに来るように言われた。何だったか忘れたけど。かぼちゃかなんかじゃねぇかな。まぁそれはどうでもいい。
だからさ、自分ちの畑に行って、一回帰るのめんどくせぇから、そのままオッサンちに行って、それから家に向かう頃には随分暗くなっていた。
多分その日は月もなかったんだ。辺りは本当に真っ暗で、慣れた道じゃないと歩けないぐらいだった。まあそんなに遠い距離でもなかったし、夜が怖いなんて思ったこともなかったし、何も気にせず野菜を抱えて家に向かった。
歩いてると、誰かの気配がした。前の方に誰かがいる。月はなかったけど、星明りでそれぐらいはわかった。
だからこんばんは、って挨拶したんだ。声を聞けば誰だかわかるから。
そうしたら、返事がなかった。
村の人間なら、必ず挨拶を返すはずなんだ。今まで返されなかったことなんてなかったし、村には偏屈なやつもいなかったから。
それが誰だかわからないけど、とにかくすっげぇヤバい気がした。第六感ってーの?ぞくっと鳥肌が立って、オレはその誰かさんのそばを走り抜けた。隣を通るときに捕まるんじゃないかって思いで頭がいっぱいでめちゃくちゃ怖かったけど、その時は大丈夫だった。
その時は、な。
通り過ぎて、ほっと息を吐こうとした瞬間だった。
生臭い匂いが漂って、背後で荒い息が聞こえた。
やばい、やばい、やばい!ってオレは焦って、必死で足を動かした。多分その間に手に持ってた野菜なんて投げ捨ててたんだと思う。もうめちゃくちゃに走って、もしかしたら何か叫んでたかもしれないけど、近所から誰かが出てくることはなかった。
後から考えたら、これもおかしいんだよ。まだ日も落ちたばかりだからどこの家も寝てるはずがないから、家には明かりがついているはずなのに、そんなものは何も見えなかったんだ。
ただ、自分ちの明かりは見えた。
まだ背後から何かが迫ってくる気配はある。まっすぐ家に飛び込んで、その気配を絶対に中に入れないようにドアを叩きつけて閉めて、勢いのまま弟を探して捕まえた。弟はビビッて泣き出したけど、多分オレもその時もう泣いてたと思う。弟を捕まえて母ちゃんに抱きついて、驚いてる父ちゃんにも必死で訴えた。多分何も伝わってなかったと思うけど、オレも何を言おうとしてたのか覚えてない。
――ドンドンドン!
ぼろいドアが外れるんじゃないかってぐらいの勢いで、ドアが叩かれた。オレは飛び上がって、ドアに向かおうとする父ちゃんを必死で引き留めた。
――ドンドンドン!
――ドンドンドン!
始めは村の誰かだと思っていた父ちゃんも、すぐにおかしいということに気がついたのか、オレを抱いて母ちゃんたちと一緒に丸くなった。
だって、村では誰もドアに鍵なんてかけないんだよ。そもそもオレの家にはなかったし。
だから、もし何か緊急事態だとしても、こんなにノックを繰り返す必要はないんだ。
どれぐらいかわからないけれど、オレも弟もとにかく泣きじゃくっていた。母ちゃんや父ちゃんが身動きするのも怖くて、次の日見たら手のひらに爪の跡がくっきり残ってた。
ずっと続いていたノックが止まり、それでもオレたちはまだひと塊になっていた。誰も何も言わないままだった。
それでも、あの怖いものは去ったんじゃないか、と油断した頃、今度は家ごと大きく揺れた。何の音かわからないけど、とにかくでかい音だった。
家がボールみたいに跳ねてるんじゃないかってぐらいに大きく軋んで揺れ続け、オレたちはまた泣き叫んだ。
それは多分一晩中続いてた。もうぜってぇ家ぶっ壊れて、オレら全員食われちまうんだって思ってたけど、家は無事だったしオレたちはひとりも食われなかった。
家が揺れなくなって、窓の外がすっかり明るくなってから、母ちゃんがオレらを抱きしめて、父ちゃんがドアを開けに行った。恐る恐る、オレたちは息を飲んでドアの外を見たけど、そこはいつも通りの風景が続いているだけだった。
そこでようやく、父ちゃんに何があったのかを聞かれて、オレも何があったのかを思い出した。すれ違った誰かの話をして、父ちゃんとオレで畑までの道を一緒に戻ってみることにした。
あの変な気配に会ったのは多分この辺りだ、と思ったところに、動物の死体があった。
それが、変なんだよ。大きさはイタチぐらいだったんだけど、イタチじゃねえし、とにかく、オレらが知ってるどの動物とも違った。
オレと父ちゃんはその動物をちゃんと葬った。あいつがオレらに何をしたかったのかはわからないけれど、自然のものなら自然に返すのはいいからな。
あれから同じものに会ったことはない。違うものにも会ってない。しばらくは夜ひとりで出歩くのは怖かったし母ちゃんたちは無理強いしなかったけど、兄弟が増えてくるとそういうわけにもいかないしな。
オレはずっと、暗闇で会った人には挨拶をすることを続けている。声さえ聞けば、それが誰かわかるからな。
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