言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2013'08.28.Wed
「アルミンの彼氏って何してる人?」
不意をつかれた質問に、針を指に突き刺した。縫っていたスカートを落として悶えるアルミンを気に留めず、友人はずい、とぶつかるように横に腰を下ろす。更に反対側も同様にかためられ、どうにか逃げ出せないかアルミンは必死で脳を回転させた。
「この間迎えにきてたのって車ででしょ?社会人?」
「ええ〜……僕の話はいいよ、ハンナの話聞いてあげて」
「聞き飽きた!」
「フランクなんか興味ないし!」
「ちょっと!失礼ね!」
学内で有名なハンナとフランクのカップルは、確かに今更聞きたいような話もない。アルミンはスカートをたぐり寄せて針を探しながら、黙秘を貫くことにした。
先日彼女たちと飲みに行った際に散々飲まされ、前後不覚の状態でジャンに電話をしてしまったのが間違いだった。お酒を飲むとふわふわと気持ちよくなって、無性に誰かに甘えたくなってしまう。その相手がジャンしか浮かばなくて、深夜だというのに電話をかけ、あまつさえ迎えにきてもらうという失態を犯した。ジャンに迷惑をかけただけではなく、友人たちにジャンを会わせることになったのが一番の失敗だった。
――恥ずかしさ以上に、見られたくなかったのだ。アルミンの女友達はみなかわいい子ばかりで、そんなことはしない子たちだとわかっていても、ジャンを取られはしないかと不安だった。
だんまりを決め込んだアルミンにやがて友人たちは諦めた、かのように見せかけて、腕を肩に回し更に密着してくる。アルミンが女性に対して劣情を抱いたことがないにしても、ぎょっとするほどの触れ合いだ。
「ちょっと、怒るよ」
「私たちだって怒ってるわよー、ずっと彼氏ができたこと秘密にしてくれちゃって」
「だって、それは」
「いい?アルミン、あなたの彼氏はどうでもいいの。問題はその友達、あるいは同僚!」
「え?」
「合コン組めって話!」
「あ〜……」
みんな揃ってかわいい子だが、今はフリーばかりだ。もうすぐ学祭で、それまでは展示物に集中すると言っていたが、準備の中であちこちでカップルができているのがやや気に食わないらしい。
「合コン……」
ジャンの同僚を思い浮かべてみる。出会いはアルミンのバイト先のショッピングモールだ。彼の同僚も何人か知っているが、彼女たちのお眼鏡にかなうだろうか。悪い人たちではないが、彼女たちの好きなタイプも大体知っているので少し違うような気もする。いっそモール内の女性スタッフに人気のある、女性スタッフに会わせた方が喜ぶかもしれない。
「……やっぱりやだ」
「なんでよ〜!」
「……だってジャンが幹事になるでしょ。ジャンも行くことになるじゃないか……」
「のろけが聞きたいわけじゃないんだけどなぁ」
けらけら笑って友人はアルミンを離し、衣装の作成に戻った。楽しげな様子とは裏腹に、アルミンはやや不機嫌になる。想像でふてくされている子どもっぽい自分が嫌になるが、アルミンも初めてのことにうまく感情が制御できない。
「……男の人って、普通合コンぐらい行ったことある?」
「まー、あれほどかっこいい人ならあるんじゃない?」
「社交的だったしね〜」
「……」
「落ち込まない!」
笑いながら背を叩かれる。そう言われても、自分のような地味な人間をどうしてジャンが好きになったのかまだわからないでいる。幸せいっぱいではあれど、自分の経験のなさをもどかしく思うことも多い。
「はいはい、じゃー今日のノルマをすっきり終わらせてしまいましょー」
急かされて手を動かすも、結局心ここににあらずのアルミンは大して進めることができなかった。
*
結局ジャンに会いたくなり、アルミンは仕事終わりのジャンの部屋に押し掛けた。連絡すると歓迎してくれたジャンに嬉しくなり、夕食の買い出しをして向かって今台所に立っている。もらったばかりの合い鍵を使えることが嬉しくて、迷惑ではないかと心配になるがジャンはいつも笑顔で迎えてくれた。
社会人のジャンとはなかなか時間を合わせることができず、アルミンも学祭の準備で忙しいためつき合い始めてからおよそデートらしいデートはしたことがない。それでもこうしてふたりで時間を過ごせるだけで幸せで、台所に立つアルミンは思わずにやけている。
「っと、洗濯前にボタンつけねえと」
「……取れたの?」
「今日着てたシャツのやつ。めんどくせーけど、覚えてるうちにしねえと忘れるからな」
「僕、やろうか?」
「できんの?」
「失礼な!こう見えても結構器用だよ!」
「はは!つけてくれるなら助かる。どうも自分でつけるとすぐ取れるんだよな」
「置いてて、あとでやるから」
「ああ」
機嫌よくボタンとシャツをわかりやすいところに置くジャンから目をそらし、アルミンは料理に戻るが妙に心拍が乱れて手が止まってしまった。台所で料理をして、縫い物もだなんて、まるで妻のようじゃないか。自分が男だということを棚に上げそうだ。
「鍋まだするのか?」
「あ、もう火は通ったと思う。ジャガイモが大丈夫だったら止めてもらっていいよ」
「ん」
隣に立ったジャンにはっとして慌てて包丁を握り直した。あとはこのトマトを切ってサラダを盛りつければほとんど完成だ。煮込みハンバーグの鍋を開けて様子を見るジャンを盗み見る。ああ、きっといい旦那様になるんだろうな、なんて。
「アルミン?」
「な、何っ!?」
「なんで顔赤いんだよ」
ジャンに指摘されて更に顔が熱くなる。慌てて俯くと隠れた耳元にキスをされて悲鳴を上げた。ジャンは楽しげに笑いながら、コンロの火を止めてアルミンの手から包丁を取る。アルミンが慌てるより先に皿出して、と仕事を与えられ、素直に負けを認めて引き下がった。
あまりしないが、ジャンも料理が全くできないと言うことではない。意外にも和食の方が得意らしく、一度ジャンが簡単そうに作った肉じゃがの前に困惑したことがある。いつでも嫁に行けます、と冗談めかした言葉が出てきたほど動揺した。アルミンの幼なじみのエレンは料理など一切できず、家族に甘えきっている。
――モテないはずがないんだよな。
「……ジャン、あのね」
「んー?」
「合コンって行ったことある?」
「……」
ジャンの手元でトマトが潰れた。やっぱり、と落ち込むアルミンに慌てたように、ジャンは言葉を探すように口を開くが何も言えない。
「いっ、行くのか!?」
「……え?」
「誘われたのか?行くのか?ど、どっち側で!?」
「え、えっと、僕じゃなくて……」
「行かないのか?」
「行かないよ!ジャンがいるのに」
「焦った……合コンであんな酔っぱらった姿見せられたら誰だって持って帰るぜ」
「そ、その話はもうやめて!」
後悔しか残っていない。ジャンの記憶からも消したいぐらいだ。
「ジャンが、行ったことあるかって話!」
「あー、まぁ人数合わせぐらいにはな」
気を取り直したジャンの意識が手元に戻る。しかし友人たちの言葉を思い出し、黙ったまま皿を出したり周りで作業をしていると、苦しげに呻くような声が告白した。
「それなりには……」
「……ふーん……」
「なんと言いますか……若かったっていうか、な?」
「ふーん」
「いや、あれですよ?彼女がほしいってんじゃなくて、騒ぎたいだけの時期ってあるじゃないですか」
「ふーん」
「……でーい!」
包丁を置いたジャンが手を洗い、どうするのかと見ていたら律儀に手を拭いてから抱きしめられた。
「もう勘弁してくれ」
「……ははっ」
どこか拗ねたような口調に、ごめんと返して背中に手を回す。わがままを言っているのはわかっているが、ジャンがそれに応えてくれるのが嬉しい。
「ご飯にしよ」
「……おう」
ジャンからゆっくり離れ、伸び上がって彼の唇にキスを落とす。少し照れたような表情に満足して笑うと、つられて頬を緩めたジャンに鼻をつままれた。
不意をつかれた質問に、針を指に突き刺した。縫っていたスカートを落として悶えるアルミンを気に留めず、友人はずい、とぶつかるように横に腰を下ろす。更に反対側も同様にかためられ、どうにか逃げ出せないかアルミンは必死で脳を回転させた。
「この間迎えにきてたのって車ででしょ?社会人?」
「ええ〜……僕の話はいいよ、ハンナの話聞いてあげて」
「聞き飽きた!」
「フランクなんか興味ないし!」
「ちょっと!失礼ね!」
学内で有名なハンナとフランクのカップルは、確かに今更聞きたいような話もない。アルミンはスカートをたぐり寄せて針を探しながら、黙秘を貫くことにした。
先日彼女たちと飲みに行った際に散々飲まされ、前後不覚の状態でジャンに電話をしてしまったのが間違いだった。お酒を飲むとふわふわと気持ちよくなって、無性に誰かに甘えたくなってしまう。その相手がジャンしか浮かばなくて、深夜だというのに電話をかけ、あまつさえ迎えにきてもらうという失態を犯した。ジャンに迷惑をかけただけではなく、友人たちにジャンを会わせることになったのが一番の失敗だった。
――恥ずかしさ以上に、見られたくなかったのだ。アルミンの女友達はみなかわいい子ばかりで、そんなことはしない子たちだとわかっていても、ジャンを取られはしないかと不安だった。
だんまりを決め込んだアルミンにやがて友人たちは諦めた、かのように見せかけて、腕を肩に回し更に密着してくる。アルミンが女性に対して劣情を抱いたことがないにしても、ぎょっとするほどの触れ合いだ。
「ちょっと、怒るよ」
「私たちだって怒ってるわよー、ずっと彼氏ができたこと秘密にしてくれちゃって」
「だって、それは」
「いい?アルミン、あなたの彼氏はどうでもいいの。問題はその友達、あるいは同僚!」
「え?」
「合コン組めって話!」
「あ〜……」
みんな揃ってかわいい子だが、今はフリーばかりだ。もうすぐ学祭で、それまでは展示物に集中すると言っていたが、準備の中であちこちでカップルができているのがやや気に食わないらしい。
「合コン……」
ジャンの同僚を思い浮かべてみる。出会いはアルミンのバイト先のショッピングモールだ。彼の同僚も何人か知っているが、彼女たちのお眼鏡にかなうだろうか。悪い人たちではないが、彼女たちの好きなタイプも大体知っているので少し違うような気もする。いっそモール内の女性スタッフに人気のある、女性スタッフに会わせた方が喜ぶかもしれない。
「……やっぱりやだ」
「なんでよ〜!」
「……だってジャンが幹事になるでしょ。ジャンも行くことになるじゃないか……」
「のろけが聞きたいわけじゃないんだけどなぁ」
けらけら笑って友人はアルミンを離し、衣装の作成に戻った。楽しげな様子とは裏腹に、アルミンはやや不機嫌になる。想像でふてくされている子どもっぽい自分が嫌になるが、アルミンも初めてのことにうまく感情が制御できない。
「……男の人って、普通合コンぐらい行ったことある?」
「まー、あれほどかっこいい人ならあるんじゃない?」
「社交的だったしね〜」
「……」
「落ち込まない!」
笑いながら背を叩かれる。そう言われても、自分のような地味な人間をどうしてジャンが好きになったのかまだわからないでいる。幸せいっぱいではあれど、自分の経験のなさをもどかしく思うことも多い。
「はいはい、じゃー今日のノルマをすっきり終わらせてしまいましょー」
急かされて手を動かすも、結局心ここににあらずのアルミンは大して進めることができなかった。
*
結局ジャンに会いたくなり、アルミンは仕事終わりのジャンの部屋に押し掛けた。連絡すると歓迎してくれたジャンに嬉しくなり、夕食の買い出しをして向かって今台所に立っている。もらったばかりの合い鍵を使えることが嬉しくて、迷惑ではないかと心配になるがジャンはいつも笑顔で迎えてくれた。
社会人のジャンとはなかなか時間を合わせることができず、アルミンも学祭の準備で忙しいためつき合い始めてからおよそデートらしいデートはしたことがない。それでもこうしてふたりで時間を過ごせるだけで幸せで、台所に立つアルミンは思わずにやけている。
「っと、洗濯前にボタンつけねえと」
「……取れたの?」
「今日着てたシャツのやつ。めんどくせーけど、覚えてるうちにしねえと忘れるからな」
「僕、やろうか?」
「できんの?」
「失礼な!こう見えても結構器用だよ!」
「はは!つけてくれるなら助かる。どうも自分でつけるとすぐ取れるんだよな」
「置いてて、あとでやるから」
「ああ」
機嫌よくボタンとシャツをわかりやすいところに置くジャンから目をそらし、アルミンは料理に戻るが妙に心拍が乱れて手が止まってしまった。台所で料理をして、縫い物もだなんて、まるで妻のようじゃないか。自分が男だということを棚に上げそうだ。
「鍋まだするのか?」
「あ、もう火は通ったと思う。ジャガイモが大丈夫だったら止めてもらっていいよ」
「ん」
隣に立ったジャンにはっとして慌てて包丁を握り直した。あとはこのトマトを切ってサラダを盛りつければほとんど完成だ。煮込みハンバーグの鍋を開けて様子を見るジャンを盗み見る。ああ、きっといい旦那様になるんだろうな、なんて。
「アルミン?」
「な、何っ!?」
「なんで顔赤いんだよ」
ジャンに指摘されて更に顔が熱くなる。慌てて俯くと隠れた耳元にキスをされて悲鳴を上げた。ジャンは楽しげに笑いながら、コンロの火を止めてアルミンの手から包丁を取る。アルミンが慌てるより先に皿出して、と仕事を与えられ、素直に負けを認めて引き下がった。
あまりしないが、ジャンも料理が全くできないと言うことではない。意外にも和食の方が得意らしく、一度ジャンが簡単そうに作った肉じゃがの前に困惑したことがある。いつでも嫁に行けます、と冗談めかした言葉が出てきたほど動揺した。アルミンの幼なじみのエレンは料理など一切できず、家族に甘えきっている。
――モテないはずがないんだよな。
「……ジャン、あのね」
「んー?」
「合コンって行ったことある?」
「……」
ジャンの手元でトマトが潰れた。やっぱり、と落ち込むアルミンに慌てたように、ジャンは言葉を探すように口を開くが何も言えない。
「いっ、行くのか!?」
「……え?」
「誘われたのか?行くのか?ど、どっち側で!?」
「え、えっと、僕じゃなくて……」
「行かないのか?」
「行かないよ!ジャンがいるのに」
「焦った……合コンであんな酔っぱらった姿見せられたら誰だって持って帰るぜ」
「そ、その話はもうやめて!」
後悔しか残っていない。ジャンの記憶からも消したいぐらいだ。
「ジャンが、行ったことあるかって話!」
「あー、まぁ人数合わせぐらいにはな」
気を取り直したジャンの意識が手元に戻る。しかし友人たちの言葉を思い出し、黙ったまま皿を出したり周りで作業をしていると、苦しげに呻くような声が告白した。
「それなりには……」
「……ふーん……」
「なんと言いますか……若かったっていうか、な?」
「ふーん」
「いや、あれですよ?彼女がほしいってんじゃなくて、騒ぎたいだけの時期ってあるじゃないですか」
「ふーん」
「……でーい!」
包丁を置いたジャンが手を洗い、どうするのかと見ていたら律儀に手を拭いてから抱きしめられた。
「もう勘弁してくれ」
「……ははっ」
どこか拗ねたような口調に、ごめんと返して背中に手を回す。わがままを言っているのはわかっているが、ジャンがそれに応えてくれるのが嬉しい。
「ご飯にしよ」
「……おう」
ジャンからゆっくり離れ、伸び上がって彼の唇にキスを落とす。少し照れたような表情に満足して笑うと、つられて頬を緩めたジャンに鼻をつままれた。
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