言い訳置き場
言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。
2012'04.09.Mon
「卒業の日まで」
彼の声は震えもせず、澄み渡るようだった。春の嵐も過ぎ去った後の青空のように、静かで、青い。
「その日まで、お側にいさせて下さい」
ああ、お前は嫌になるほど忍びだな。そう思ったことを、覚えている。
それを言うと、伊助は何ですかそれ、と三郎次を笑い飛ばした。
「ぼくはただの染め物屋です。ねぇ、さと?」
伊助は膝に乗せた娘に額を寄せる。まだ首も据わらない幼子は楽しげに笑い声をあげた。父親そっくりの鼻をしている。幸せそうに笑う父子に、三郎次もつられて頬を緩めた。
「嫁さんは?」
「買い物に。もう帰ってくるでしょうから、上がって下さい」
「茶ぐらい出せよ」
「言われなくてもそれぐらいしますぅ」
機嫌のいい娘を寝かせ、伊助は三郎次と入れ替わるように立ち上がった。部屋へ上がった三郎次は赤子のそばへ座り、指先で柔らかい頬をつつく。独り身の三郎次にはとんと無縁の存在だ。愛想良く笑うところは、きっと母親に似たのだろう。
「ただいまー!」
「母ちゃんお帰り、三郎次先輩が来てるよ」
「あらっ、こんにちは!いらっしゃい」
「ご無沙汰してます」
「お元気?まあ汚いところですけど、ゆっくりしていって下さいね。父ちゃん、お茶ぐらい出しなさいよ!」
「今持っていくよ!」
夫婦の掛け合いを笑った。幸せそうな姿を見るたびに安心する。これでよかったのだ、と心から思える。――待っている、と、言わなくてよかった。お茶を持ってやってきた伊助を振り返る。
「どうぞ」
「ああ。抱いてもいいか」
「ええ」
赤子を抱き上げる。以前に来たときはまだ母親の腹の中にいた。さと、先ほど教えてもらった名を呼べば、わかっているのかいないのか、赤子はきょとんとして三郎次を見上げていた。手の中に確かにあるこの命。三郎次が伊助を手放さなければ、この子は生まれなかったのだ。そんなことを考えて己を笑う。まるで、悔やんでいるようではないか。
「人懐っこいんです」
「そりゃいいことだ。いい商人になる」
「気が早いなぁ」
「三郎次さん、ご飯食べて行って下さいね!」
「お言葉に甘えて」
「遠慮しないなぁ」
「父ちゃんはほんっと、素直じゃないんだから。三郎次さんが来たらいつだって機嫌よくなっちゃうくせに」
「誰が!」
けらけら笑い合う夫婦はいつも通りだ。昨日まで戦場を駆けていた自分とは違う世界を生きている。ここへ来るのは、自分が守りたいものを確認するためかもしれない。
「次に来たときにゃ、さとも大きくなってるだろうなぁ」
「毎日大きくなりますよ」
「そうか。いい女になれよ」
「……あげませんよ」
「ははっ!親馬鹿め」
彼の声は震えもせず、澄み渡るようだった。春の嵐も過ぎ去った後の青空のように、静かで、青い。
「その日まで、お側にいさせて下さい」
ああ、お前は嫌になるほど忍びだな。そう思ったことを、覚えている。
それを言うと、伊助は何ですかそれ、と三郎次を笑い飛ばした。
「ぼくはただの染め物屋です。ねぇ、さと?」
伊助は膝に乗せた娘に額を寄せる。まだ首も据わらない幼子は楽しげに笑い声をあげた。父親そっくりの鼻をしている。幸せそうに笑う父子に、三郎次もつられて頬を緩めた。
「嫁さんは?」
「買い物に。もう帰ってくるでしょうから、上がって下さい」
「茶ぐらい出せよ」
「言われなくてもそれぐらいしますぅ」
機嫌のいい娘を寝かせ、伊助は三郎次と入れ替わるように立ち上がった。部屋へ上がった三郎次は赤子のそばへ座り、指先で柔らかい頬をつつく。独り身の三郎次にはとんと無縁の存在だ。愛想良く笑うところは、きっと母親に似たのだろう。
「ただいまー!」
「母ちゃんお帰り、三郎次先輩が来てるよ」
「あらっ、こんにちは!いらっしゃい」
「ご無沙汰してます」
「お元気?まあ汚いところですけど、ゆっくりしていって下さいね。父ちゃん、お茶ぐらい出しなさいよ!」
「今持っていくよ!」
夫婦の掛け合いを笑った。幸せそうな姿を見るたびに安心する。これでよかったのだ、と心から思える。――待っている、と、言わなくてよかった。お茶を持ってやってきた伊助を振り返る。
「どうぞ」
「ああ。抱いてもいいか」
「ええ」
赤子を抱き上げる。以前に来たときはまだ母親の腹の中にいた。さと、先ほど教えてもらった名を呼べば、わかっているのかいないのか、赤子はきょとんとして三郎次を見上げていた。手の中に確かにあるこの命。三郎次が伊助を手放さなければ、この子は生まれなかったのだ。そんなことを考えて己を笑う。まるで、悔やんでいるようではないか。
「人懐っこいんです」
「そりゃいいことだ。いい商人になる」
「気が早いなぁ」
「三郎次さん、ご飯食べて行って下さいね!」
「お言葉に甘えて」
「遠慮しないなぁ」
「父ちゃんはほんっと、素直じゃないんだから。三郎次さんが来たらいつだって機嫌よくなっちゃうくせに」
「誰が!」
けらけら笑い合う夫婦はいつも通りだ。昨日まで戦場を駆けていた自分とは違う世界を生きている。ここへ来るのは、自分が守りたいものを確認するためかもしれない。
「次に来たときにゃ、さとも大きくなってるだろうなぁ」
「毎日大きくなりますよ」
「そうか。いい女になれよ」
「……あげませんよ」
「ははっ!親馬鹿め」
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2012'04.09.Mon
「孫兵?」
「……作兵衛」
富松が委員会から戻ると、部屋の前に孫兵がいた。何やら両手に抱えるほどの包みを抱えて、眉を寄せている。
「どうしたんだよ、困った顔して」
「さっき、実習に行かれてた竹谷先輩が帰ってきたんだ。それで、おみやげにお饅頭くれたんだけど」
「……それ、全部か?」
「うん……」
「……多くねえ?」
「……うん、そうなんだ。それで、よかったら一緒にと思ったんだけど」
「あー、丁度腹減ってんだ。入れよ」
からりと富松は戸を開けて、絶句した。孫兵も後ろから中を覗いて、同様に言葉を失う。――嵐でも、きたのだろうか。着物も本も一緒くたに散らばった部屋は足の踏み場もない。表情から察するに、富松が知る限りこうもひどい惨状ではなかったようだが、孫兵はかける言葉もなく背を叩く。
「手伝うから、先に饅頭片づけるの手伝ってくれないか?」
「ああ……」
富松は溜息をついて肩を落とす。ふたりで外を向いて部屋の前に座り、孫兵は包みを開いた。
「竹谷先輩も、なんだってこんな大量に」
「一年生にも分けるつもりだったらしいんだ。でもほら、今一年生もいないだろ」
「ああ、そうか。あいつらもオリエンテーリングでいないんだよな」
「そう。これ、竹谷先輩が実習中に作ったんだって」
「それどんな実習なんだ?」
「忍者だとばれずに潜り込めるか、ってことみたい。途中で先生たちが邪魔しにくるらしいよ」
「うへぇ。おれそういうの苦手だな」
「ぼくも」
饅頭を取り、富松はいただきますと口にした。言われてみれば不格好な気もするが、味には関係ない。かぶりついた饅頭は柔らかく、餡の甘味が口の中に広がる。満足げに頬を緩める富松を見て、孫兵も饅頭を口にした。
「うまい」
「竹谷先輩器用だから」
「先輩たちってなんでもできちまうよな」
「……」
「どうした?」
「うん……」
孫兵は言葉を濁し、饅頭をゆっくり咀嚼する。富松はそれを見ていたが、何も言わずに饅頭を食べた。
「……五年生って、実習が増えるだろ」
「ああ、そうだな」
「実習に行かれてる間、委員会が大変でさ……一年生ってどうしてあんなに落ち着きがないんだろう」
「……お前、何言ってんだ?」
「は?」
「生物んとこの一年なんてまだ大人しい方だろうが!用具の一年なんかもっとめんどくせぇぞ!」
思わず声を荒げた富松に、孫兵は目を丸くした。饅頭を握りつぶさんばかりの勢いで、富松は孫兵を睨みつける。
「なんっかい注意しても喜三太は委員会にペットのナメクジをつれてくるし、しんべヱはすぐに腹を空かせて動かなくなるし、平太はちょっとしたことで泣き言言うし!」
「何だよそれぐらい!三治郎はすぐからくりを思いついて作業を投げちゃうし、虎若はどんなに教えても掃除が下手だし、一平は勉強があるからって出てこないし孫次郎は怖がって生物に触れないし!」
「なんだよそれ。生物委員は頼りねえな」
「なんだって?三治郎は器用だから虫も逃がさないし、虎若も鍛えてるから集中力がすごい。一平は冷静になれば力を発揮するし、孫次郎だって確実に力をつけてるんだからな!用具と一緒にするなよ」
「なんだと?しんべヱだって力仕事は誰より得意だし、喜三太は言われた仕事はきちんとするし、平太だって自分に非があれば認めるいい子だ!」
思わず拳をかためたふたりは、次の瞬間聞こえた笑い声にどきりと身をすくませた。いかにも楽しげにこちらへやってくるのは食満と竹谷で、ふたりはごくりと唾を飲む。
「竹谷、どうだ、うちの次期委員長は。しっかりしてるだろう」
「ははっ、負けないようにがんばります」
「けっ、食満委員長ッ!なっ、何かご用ですか!?」
「明日のことで話があってな。急に実習の予定が早まって、今夜出ることになった。悪いが明日からまた委員会頼むぞ。まぁ、お前は後輩たちをよく見ているようだから、心配ないがな」
「もう、からかわねぇで下さい!委員会の仕事はちゃんとやります!」
孫兵は真っ赤になった富松の姿に思わず笑いをこぼした。しかし竹谷につつかれて振り返る。
「笑ってる場合じゃねえぞ。あいつは来年、委員長代理なんだからな」
「え」
「あっと言う間に、追いつけなくなっちまうぞ」
「……そうなんですか?」
「兵助が四年から代理やってた。どう差がついたかはご覧の通り。ま、富松次第でもあるけどな」
「……負けません」
「頼りになる後輩だ」
からから笑う竹谷になんとなく恥ずかしくなり、孫兵は顔を伏せた。つまらない言い合いを聞かれたことも恥ずかしいが、柄にもなく競争心を見せてしまったこともどこかいたたまれない。竹谷が嬉しそうなのが更に羞恥を誘う。
「安心して卒業できるように、頑張ってくれよ」
「……言われなくとも」
「……作兵衛」
富松が委員会から戻ると、部屋の前に孫兵がいた。何やら両手に抱えるほどの包みを抱えて、眉を寄せている。
「どうしたんだよ、困った顔して」
「さっき、実習に行かれてた竹谷先輩が帰ってきたんだ。それで、おみやげにお饅頭くれたんだけど」
「……それ、全部か?」
「うん……」
「……多くねえ?」
「……うん、そうなんだ。それで、よかったら一緒にと思ったんだけど」
「あー、丁度腹減ってんだ。入れよ」
からりと富松は戸を開けて、絶句した。孫兵も後ろから中を覗いて、同様に言葉を失う。――嵐でも、きたのだろうか。着物も本も一緒くたに散らばった部屋は足の踏み場もない。表情から察するに、富松が知る限りこうもひどい惨状ではなかったようだが、孫兵はかける言葉もなく背を叩く。
「手伝うから、先に饅頭片づけるの手伝ってくれないか?」
「ああ……」
富松は溜息をついて肩を落とす。ふたりで外を向いて部屋の前に座り、孫兵は包みを開いた。
「竹谷先輩も、なんだってこんな大量に」
「一年生にも分けるつもりだったらしいんだ。でもほら、今一年生もいないだろ」
「ああ、そうか。あいつらもオリエンテーリングでいないんだよな」
「そう。これ、竹谷先輩が実習中に作ったんだって」
「それどんな実習なんだ?」
「忍者だとばれずに潜り込めるか、ってことみたい。途中で先生たちが邪魔しにくるらしいよ」
「うへぇ。おれそういうの苦手だな」
「ぼくも」
饅頭を取り、富松はいただきますと口にした。言われてみれば不格好な気もするが、味には関係ない。かぶりついた饅頭は柔らかく、餡の甘味が口の中に広がる。満足げに頬を緩める富松を見て、孫兵も饅頭を口にした。
「うまい」
「竹谷先輩器用だから」
「先輩たちってなんでもできちまうよな」
「……」
「どうした?」
「うん……」
孫兵は言葉を濁し、饅頭をゆっくり咀嚼する。富松はそれを見ていたが、何も言わずに饅頭を食べた。
「……五年生って、実習が増えるだろ」
「ああ、そうだな」
「実習に行かれてる間、委員会が大変でさ……一年生ってどうしてあんなに落ち着きがないんだろう」
「……お前、何言ってんだ?」
「は?」
「生物んとこの一年なんてまだ大人しい方だろうが!用具の一年なんかもっとめんどくせぇぞ!」
思わず声を荒げた富松に、孫兵は目を丸くした。饅頭を握りつぶさんばかりの勢いで、富松は孫兵を睨みつける。
「なんっかい注意しても喜三太は委員会にペットのナメクジをつれてくるし、しんべヱはすぐに腹を空かせて動かなくなるし、平太はちょっとしたことで泣き言言うし!」
「何だよそれぐらい!三治郎はすぐからくりを思いついて作業を投げちゃうし、虎若はどんなに教えても掃除が下手だし、一平は勉強があるからって出てこないし孫次郎は怖がって生物に触れないし!」
「なんだよそれ。生物委員は頼りねえな」
「なんだって?三治郎は器用だから虫も逃がさないし、虎若も鍛えてるから集中力がすごい。一平は冷静になれば力を発揮するし、孫次郎だって確実に力をつけてるんだからな!用具と一緒にするなよ」
「なんだと?しんべヱだって力仕事は誰より得意だし、喜三太は言われた仕事はきちんとするし、平太だって自分に非があれば認めるいい子だ!」
思わず拳をかためたふたりは、次の瞬間聞こえた笑い声にどきりと身をすくませた。いかにも楽しげにこちらへやってくるのは食満と竹谷で、ふたりはごくりと唾を飲む。
「竹谷、どうだ、うちの次期委員長は。しっかりしてるだろう」
「ははっ、負けないようにがんばります」
「けっ、食満委員長ッ!なっ、何かご用ですか!?」
「明日のことで話があってな。急に実習の予定が早まって、今夜出ることになった。悪いが明日からまた委員会頼むぞ。まぁ、お前は後輩たちをよく見ているようだから、心配ないがな」
「もう、からかわねぇで下さい!委員会の仕事はちゃんとやります!」
孫兵は真っ赤になった富松の姿に思わず笑いをこぼした。しかし竹谷につつかれて振り返る。
「笑ってる場合じゃねえぞ。あいつは来年、委員長代理なんだからな」
「え」
「あっと言う間に、追いつけなくなっちまうぞ」
「……そうなんですか?」
「兵助が四年から代理やってた。どう差がついたかはご覧の通り。ま、富松次第でもあるけどな」
「……負けません」
「頼りになる後輩だ」
からから笑う竹谷になんとなく恥ずかしくなり、孫兵は顔を伏せた。つまらない言い合いを聞かれたことも恥ずかしいが、柄にもなく競争心を見せてしまったこともどこかいたたまれない。竹谷が嬉しそうなのが更に羞恥を誘う。
「安心して卒業できるように、頑張ってくれよ」
「……言われなくとも」
2012'04.01.Sun
「好きなんだ」
「……えーと」
――素面で来るのは、ずるいだろ。
閉店した立ち飲み屋。竹谷が水周りを片づけていると、いつものように七松がやってきた。いつもと違うのはTシャツにデニムというラフな格好であるというところだ。上の階で友人たちと営んでいる七松はいつも仕事の休憩中に現れるので、のりのきいたシャツで現れる。その性格から考えれば今の姿の方が自然なのだろうが、すっかり見慣れた姿の方がなじんでいた。
七松が店に来るたびに話をしていたら気に入ってもらえたらしく、竹谷がいないと帰ることもあるそうだ。――それを知っていて、先の言葉の意味がわからないはずがない。
「竹谷が好きだ」
真摯な瞳は竹谷からそらされることがなく、まるで射抜かれたように竹谷も立ち尽くすことしかできなかった。
「あ〜……ずるいなぁ……」
困って頭をかく竹谷に七松はわずかに不安を見せたが、すぐに胸を張った。カウンター越しに竹谷の手を取り、捕まえる。熱い手だ。
「本当に好きなんだ」
「わかりましたって」
思わず苦笑すると七松は手を離し、力なく肩を落として椅子に座る。眉尻を下げた表情に思わずにやついてしまうのは、きっと自分のせいじゃない。かわいくみえてしまうのは、今日客に飲まされた酒のせいだ。
「あのですね、そんなに言われたら、好きになっちゃうじゃないですか」
「……え?」
「どーぞ」
七松の前におちょこを置き、酒を注ぐ。さっきまで自分が飲んでいた残りだ。
「竹谷、今なんて?」
「『どうぞ』」
「そのまえ!」
「それは今度、素面の時に」
「……えーと」
――素面で来るのは、ずるいだろ。
閉店した立ち飲み屋。竹谷が水周りを片づけていると、いつものように七松がやってきた。いつもと違うのはTシャツにデニムというラフな格好であるというところだ。上の階で友人たちと営んでいる七松はいつも仕事の休憩中に現れるので、のりのきいたシャツで現れる。その性格から考えれば今の姿の方が自然なのだろうが、すっかり見慣れた姿の方がなじんでいた。
七松が店に来るたびに話をしていたら気に入ってもらえたらしく、竹谷がいないと帰ることもあるそうだ。――それを知っていて、先の言葉の意味がわからないはずがない。
「竹谷が好きだ」
真摯な瞳は竹谷からそらされることがなく、まるで射抜かれたように竹谷も立ち尽くすことしかできなかった。
「あ〜……ずるいなぁ……」
困って頭をかく竹谷に七松はわずかに不安を見せたが、すぐに胸を張った。カウンター越しに竹谷の手を取り、捕まえる。熱い手だ。
「本当に好きなんだ」
「わかりましたって」
思わず苦笑すると七松は手を離し、力なく肩を落として椅子に座る。眉尻を下げた表情に思わずにやついてしまうのは、きっと自分のせいじゃない。かわいくみえてしまうのは、今日客に飲まされた酒のせいだ。
「あのですね、そんなに言われたら、好きになっちゃうじゃないですか」
「……え?」
「どーぞ」
七松の前におちょこを置き、酒を注ぐ。さっきまで自分が飲んでいた残りだ。
「竹谷、今なんて?」
「『どうぞ』」
「そのまえ!」
「それは今度、素面の時に」
2012'03.26.Mon
※オリジナル設定の天狗が出てきます。
狼を率いていた竹谷が足を止めた。孫兵はそれに気づいて振り返る。彼は空を仰ぎ、そして学園へ向かう後輩たちを見渡した。
「孫兵、先に帰ってろ。一年生を頼む」
「……わかりました」
「竹谷先輩?」
「わりー、落し物してきた!お前らは孫兵と先に帰ってな」
振り返った一平の頭を撫で、竹谷はからっと笑った。さわやかな笑みはいつも通りで、何の疑問も抱かせない。
一年生の背を押して、孫兵は歩き出す。生物委員が管理している狼の群は竹谷のそばに残っていた。
――何か、の気配があるのだろう。孫兵にはわからなかったが、あの竹谷の様子を見る限りでは間違いない。その正体がわからない限りどうしようもないが、早めに学園に帰って誰かに助けを求めた方がいいのだろうか。竹谷は何も言わなかったが、それをどう判断したらいいのだろう。
「竹谷先輩何落としたんだろうねー」
「手裏剣とか?」
「えー、持ってるかなぁ」
「は組じゃないんだから、手裏剣ぐらい持ってるはずだよ」
「そうかなー」
三治郎と一平ののん気な会話に思わず頬を緩めた。何事もなく終わればいいのだが。
一陣の風が一同を舐めていった。勢いのある風に目をつぶる。冷たくはないが切れそうな鋭さを感じるそれは、いつも感じる風とは少し違った。不安になって一年生を確認する。と。
「……え?」
「三治郎?」
今しがた目の前にいたはずの、三治郎の姿がない。
一平がぽかんと隣を見て、前を歩いていた虎若と孫次郎も振り返って首を傾げる。そこには三治郎の荷物だけが残されていた。
「うわーっ!」
「三治郎!」
三治郎の悲鳴が頭上から届く。顔を上げれば、――巨大な鳥が、三治郎を捕まえていた。否、あれは鳥ではなく……
「なんだありゃ」
追いついた竹谷も、ぽかんと口を開けて立ち尽くした。
「一方、こちらは空の上でーす……」
「誰に話している」
「ちょっと、下ろしてよー!みんなびっくりしてるじゃん!」
「やかましいのう……」
三治郎は自分を抱き上げているものを見上げた。馴染み深い山伏の姿、身に染みついた山の匂い。しかし何よりも目立つのは赤い肌、そして天を向いた高い鼻。――天狗、と呼ばれるものだ。
三治郎の父親は山伏として全国で修業をしている。山へこもることが多く、三治郎も学園が休みのときは一緒に修行をしていた。その中で、父から教わることがいくつもある。修行だけに限らず、野山のこと、季節のこと、山の決まり、――そして、彼らの存在。
「鼎!」
「お前がその名を気安く呼ぶな。姫がお呼びだ」
「え?ちょっと待ってよ、鼎、ぼくに用があるんじゃないの!?」
「お前にだ、夢前行者」
「……鼎、それ、父上」
「……お前、三治郎か」
「もー!何べん間違えたら気が済むんだよー!」
「お前らは似ててわからん」
「サイズが違うでしょ、サイズが!とにかく下ろしてよ!」
天狗の腕の中で暴れると、彼は溜息をついた。溜息をつきたいのはこっちである。流れる時間の感覚が違う彼らにとって、人間は大人も子どもも大差がないらしい。彼が探していたのは、三治郎ではなく父親であるようだ。
元の場所へ戻すという気遣いもないのか、天狗はそのまま下降する。知っている裏山だからいいものの、全く別の場所でこんなことをされたら必死で抗議するところだ。
「それで、今度はお姫様はどんなわがままを言ってるの?」
「わがままではない!」
「忠誠心が厚いのはいいことだと思うけど、鼎はちょっとお姫様を甘やかしすぎだよ」
「その名を呼ぶな。姫にいただいた名だ、お前が気安く呼んでいいものではない」
「はいはい。で、天狗様、ぼくにわかることならお答えしますよ」
鼎が姫、と呼ぶ弧がいる。三治郎が知る限りでは山を仕切っているだけで、人にいたずらなどもしていない狐で害はないが、時折見知った山伏を捕まえては無理難題を押し付けることがある。この間の長期休暇の間は父親と一緒に捕まり、空を飛ぶ金魚が見たいのだと熱望された。逃げるコツは飲みこまれないことである。狐は不可能だと知っていて、暇つぶしに要求するだけなのだ。
「今回は急ぐ」
「どうしたの?」
「どこかから狼が流れてきた。こいつが図太くて、どうも出ていきそうにない」
「……鼎、ほんとに父上と間違えたの?」
その話なら恐らく三治郎の方が得意分野だ。尤も、先輩の助けを得られるなら、の話だが。
「やつらが来てから姫の体調が優れん」
「機嫌じゃなくて?」
「海へ放ってやろうか」
「もう!短気だなぁ!」
茶化すように口では言うが、それどころではないことは三治郎にもわかっている。
狐が山を取り仕切るようになったのは今に始まったことではなく、もう何代も前からのことであった。もはや山とどうかしていると言ってもいい。その狐の体調や機嫌で、山の様子が変わってくるのだ。不調が続けばそれはすなわち山の異変へとつながる。
「助けてくれそうな人、ひとり知ってる」
「……近づいてきているやつか?」
「来てる?」
「ああ、ひとりだ」
「多分その人」
「……また来る」
「間違えて父上のところに行かないようにね!」
背中の羽を大きく広げ、しかし天狗は音もなく飛び立った。竹谷の驚いた声が聞こえて振り返る。少し行った先で、竹谷が口を大きく開けて空を舞うように飛び去った天狗を見上げていた。
「竹谷先輩!」
「あっ三治郎!無事か!?」
「はーい!大丈夫です!」
「何だったんだぁ?」
「えーっとぉ……竹谷先輩、天狗はお嫌いですか?」
一体どう話したものか。三治郎の笑顔に戸惑う竹谷を見て、笑いだしたいのを押さえこむ。
狼を率いていた竹谷が足を止めた。孫兵はそれに気づいて振り返る。彼は空を仰ぎ、そして学園へ向かう後輩たちを見渡した。
「孫兵、先に帰ってろ。一年生を頼む」
「……わかりました」
「竹谷先輩?」
「わりー、落し物してきた!お前らは孫兵と先に帰ってな」
振り返った一平の頭を撫で、竹谷はからっと笑った。さわやかな笑みはいつも通りで、何の疑問も抱かせない。
一年生の背を押して、孫兵は歩き出す。生物委員が管理している狼の群は竹谷のそばに残っていた。
――何か、の気配があるのだろう。孫兵にはわからなかったが、あの竹谷の様子を見る限りでは間違いない。その正体がわからない限りどうしようもないが、早めに学園に帰って誰かに助けを求めた方がいいのだろうか。竹谷は何も言わなかったが、それをどう判断したらいいのだろう。
「竹谷先輩何落としたんだろうねー」
「手裏剣とか?」
「えー、持ってるかなぁ」
「は組じゃないんだから、手裏剣ぐらい持ってるはずだよ」
「そうかなー」
三治郎と一平ののん気な会話に思わず頬を緩めた。何事もなく終わればいいのだが。
一陣の風が一同を舐めていった。勢いのある風に目をつぶる。冷たくはないが切れそうな鋭さを感じるそれは、いつも感じる風とは少し違った。不安になって一年生を確認する。と。
「……え?」
「三治郎?」
今しがた目の前にいたはずの、三治郎の姿がない。
一平がぽかんと隣を見て、前を歩いていた虎若と孫次郎も振り返って首を傾げる。そこには三治郎の荷物だけが残されていた。
「うわーっ!」
「三治郎!」
三治郎の悲鳴が頭上から届く。顔を上げれば、――巨大な鳥が、三治郎を捕まえていた。否、あれは鳥ではなく……
「なんだありゃ」
追いついた竹谷も、ぽかんと口を開けて立ち尽くした。
「一方、こちらは空の上でーす……」
「誰に話している」
「ちょっと、下ろしてよー!みんなびっくりしてるじゃん!」
「やかましいのう……」
三治郎は自分を抱き上げているものを見上げた。馴染み深い山伏の姿、身に染みついた山の匂い。しかし何よりも目立つのは赤い肌、そして天を向いた高い鼻。――天狗、と呼ばれるものだ。
三治郎の父親は山伏として全国で修業をしている。山へこもることが多く、三治郎も学園が休みのときは一緒に修行をしていた。その中で、父から教わることがいくつもある。修行だけに限らず、野山のこと、季節のこと、山の決まり、――そして、彼らの存在。
「鼎!」
「お前がその名を気安く呼ぶな。姫がお呼びだ」
「え?ちょっと待ってよ、鼎、ぼくに用があるんじゃないの!?」
「お前にだ、夢前行者」
「……鼎、それ、父上」
「……お前、三治郎か」
「もー!何べん間違えたら気が済むんだよー!」
「お前らは似ててわからん」
「サイズが違うでしょ、サイズが!とにかく下ろしてよ!」
天狗の腕の中で暴れると、彼は溜息をついた。溜息をつきたいのはこっちである。流れる時間の感覚が違う彼らにとって、人間は大人も子どもも大差がないらしい。彼が探していたのは、三治郎ではなく父親であるようだ。
元の場所へ戻すという気遣いもないのか、天狗はそのまま下降する。知っている裏山だからいいものの、全く別の場所でこんなことをされたら必死で抗議するところだ。
「それで、今度はお姫様はどんなわがままを言ってるの?」
「わがままではない!」
「忠誠心が厚いのはいいことだと思うけど、鼎はちょっとお姫様を甘やかしすぎだよ」
「その名を呼ぶな。姫にいただいた名だ、お前が気安く呼んでいいものではない」
「はいはい。で、天狗様、ぼくにわかることならお答えしますよ」
鼎が姫、と呼ぶ弧がいる。三治郎が知る限りでは山を仕切っているだけで、人にいたずらなどもしていない狐で害はないが、時折見知った山伏を捕まえては無理難題を押し付けることがある。この間の長期休暇の間は父親と一緒に捕まり、空を飛ぶ金魚が見たいのだと熱望された。逃げるコツは飲みこまれないことである。狐は不可能だと知っていて、暇つぶしに要求するだけなのだ。
「今回は急ぐ」
「どうしたの?」
「どこかから狼が流れてきた。こいつが図太くて、どうも出ていきそうにない」
「……鼎、ほんとに父上と間違えたの?」
その話なら恐らく三治郎の方が得意分野だ。尤も、先輩の助けを得られるなら、の話だが。
「やつらが来てから姫の体調が優れん」
「機嫌じゃなくて?」
「海へ放ってやろうか」
「もう!短気だなぁ!」
茶化すように口では言うが、それどころではないことは三治郎にもわかっている。
狐が山を取り仕切るようになったのは今に始まったことではなく、もう何代も前からのことであった。もはや山とどうかしていると言ってもいい。その狐の体調や機嫌で、山の様子が変わってくるのだ。不調が続けばそれはすなわち山の異変へとつながる。
「助けてくれそうな人、ひとり知ってる」
「……近づいてきているやつか?」
「来てる?」
「ああ、ひとりだ」
「多分その人」
「……また来る」
「間違えて父上のところに行かないようにね!」
背中の羽を大きく広げ、しかし天狗は音もなく飛び立った。竹谷の驚いた声が聞こえて振り返る。少し行った先で、竹谷が口を大きく開けて空を舞うように飛び去った天狗を見上げていた。
「竹谷先輩!」
「あっ三治郎!無事か!?」
「はーい!大丈夫です!」
「何だったんだぁ?」
「えーっとぉ……竹谷先輩、天狗はお嫌いですか?」
一体どう話したものか。三治郎の笑顔に戸惑う竹谷を見て、笑いだしたいのを押さえこむ。
2012'03.24.Sat
「ん?」
誰かの声がした気がして富松は足を止めた。見渡すとぽかりと穴が開いている。あれはきっと四年生の穴掘り小僧、綾部喜八郎が掘った穴だろう。また保健委員辺りが落ちているのだろうか。思わず溜息をついて穴に近づき、覗きこむ。しかし穴の底にいたのは富松が想像した人物ではなく、一年は組の二廓伊助が困った顔でこちらを見上げていた。
「伊助?」
「あっ、富松先輩!すみませんが助けてくれませんか?出られなくて」
「ああ、ちょっと待ってろ、縄下ろしてやる。怪我はないな?」
「大丈夫です!」
迷子を捕まえるために用意していた縄を木に縛って戻り、反対側を穴の中へおろした。その縄を肩に回し、伊助を引き上げる。
「はぁっ、やっと出られた!」
「どうしたんだ?」
「……二年生の池田三郎次に落とされたんです」
「はぁ?」
「すぐ意地悪するんですよ!」
土を払いながら伊助は顔をしかめた。荷物を抱えていたから手伝おうと近づいたら、巻物をひとつ落としたから拾ってほしいと言われ、拾いに行った先に落とし穴があったらしい。
「しるしに気づかなかったぼくもぼくですけど、ほったらかして行くなんていくらなんでもひどいですよね〜」
「あいつ、しょうがねえ奴だな。昔はあんなにひねくれてなかったのに」
「そうなんですか?」
「まあ生意気は生意気だったけどな。どうしてあんなに……」
富松は言葉を切り、しばし回想する。ひと学年下の池田は何かと突っかかってくるやつだが勉強熱心で、一年の頃は素直に質問をしに来たこともある。そのたびに富松たちは、……。
――おれらのせいか?
「いや、でもおれらも穴に落としたり……は、したか……でもちゃんと助けに……行かなかったか?いや、行ったよな……」
「まあ、嫌いじゃないんですけどね」
「え?」
「三郎次のいじわるも、愛情表現みたいなもんなんですよね」
「だっ、だよなぁ!」
「こっちは迷惑ですけど」
「……だよな」
チクリと胸が痛むが気づかないふりをしてごまかす。もしや自分たちがいじめていたせいで、三郎次はあんなにひねくれてしまったのではないだろうか。
「あれ、三郎次」
「え」
伊助の声に振り返れば三郎次がこちらに向かって走ってくる姿がある。三郎次は縄を手にしていて、富松は思わず顔を覆った。いらんことした。
三郎次は富松とその影にいた伊助に気づき、はっとして足を止めた。睨むように富松を見た後、踵を返して戻っていく。
「なんですか、あれ」
「あ〜……」
おそらく、事故だったのだ。普段はいたずらばかりかもしれないが今回は偶然が重なった事故で、三郎次は助けるために縄を取りに行っていたのだろう。たまたま富松が通りかからなければ、誤解も解けてあたかもしれない。
「あ〜、伊助」
「じゃあ、ぼく行ってきます」
「へ?」
「忘れ物を届けなくちゃ」
伊助が懐から取り出したのは巻物だった。三郎次が落としたというものだろう。にこりと笑い、改めて礼を言って駆け出す伊助の背中を追う。
――あいつ、ほんとはわかってんじゃねえか?
「一年は組、恐るべし……」
用具委員の後輩を思い浮かべ、富松は乾いた笑いをこぼした。
誰かの声がした気がして富松は足を止めた。見渡すとぽかりと穴が開いている。あれはきっと四年生の穴掘り小僧、綾部喜八郎が掘った穴だろう。また保健委員辺りが落ちているのだろうか。思わず溜息をついて穴に近づき、覗きこむ。しかし穴の底にいたのは富松が想像した人物ではなく、一年は組の二廓伊助が困った顔でこちらを見上げていた。
「伊助?」
「あっ、富松先輩!すみませんが助けてくれませんか?出られなくて」
「ああ、ちょっと待ってろ、縄下ろしてやる。怪我はないな?」
「大丈夫です!」
迷子を捕まえるために用意していた縄を木に縛って戻り、反対側を穴の中へおろした。その縄を肩に回し、伊助を引き上げる。
「はぁっ、やっと出られた!」
「どうしたんだ?」
「……二年生の池田三郎次に落とされたんです」
「はぁ?」
「すぐ意地悪するんですよ!」
土を払いながら伊助は顔をしかめた。荷物を抱えていたから手伝おうと近づいたら、巻物をひとつ落としたから拾ってほしいと言われ、拾いに行った先に落とし穴があったらしい。
「しるしに気づかなかったぼくもぼくですけど、ほったらかして行くなんていくらなんでもひどいですよね〜」
「あいつ、しょうがねえ奴だな。昔はあんなにひねくれてなかったのに」
「そうなんですか?」
「まあ生意気は生意気だったけどな。どうしてあんなに……」
富松は言葉を切り、しばし回想する。ひと学年下の池田は何かと突っかかってくるやつだが勉強熱心で、一年の頃は素直に質問をしに来たこともある。そのたびに富松たちは、……。
――おれらのせいか?
「いや、でもおれらも穴に落としたり……は、したか……でもちゃんと助けに……行かなかったか?いや、行ったよな……」
「まあ、嫌いじゃないんですけどね」
「え?」
「三郎次のいじわるも、愛情表現みたいなもんなんですよね」
「だっ、だよなぁ!」
「こっちは迷惑ですけど」
「……だよな」
チクリと胸が痛むが気づかないふりをしてごまかす。もしや自分たちがいじめていたせいで、三郎次はあんなにひねくれてしまったのではないだろうか。
「あれ、三郎次」
「え」
伊助の声に振り返れば三郎次がこちらに向かって走ってくる姿がある。三郎次は縄を手にしていて、富松は思わず顔を覆った。いらんことした。
三郎次は富松とその影にいた伊助に気づき、はっとして足を止めた。睨むように富松を見た後、踵を返して戻っていく。
「なんですか、あれ」
「あ〜……」
おそらく、事故だったのだ。普段はいたずらばかりかもしれないが今回は偶然が重なった事故で、三郎次は助けるために縄を取りに行っていたのだろう。たまたま富松が通りかからなければ、誤解も解けてあたかもしれない。
「あ〜、伊助」
「じゃあ、ぼく行ってきます」
「へ?」
「忘れ物を届けなくちゃ」
伊助が懐から取り出したのは巻物だった。三郎次が落としたというものだろう。にこりと笑い、改めて礼を言って駆け出す伊助の背中を追う。
――あいつ、ほんとはわかってんじゃねえか?
「一年は組、恐るべし……」
用具委員の後輩を思い浮かべ、富松は乾いた笑いをこぼした。
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