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言い訳置き場

言い訳を書いていきます。誤字の報告などあればありがたいです。 ※唐突にみゅネタややぎゅにおの外の人のかけ算が混ざるのでご注意下さい。 日常はリンクのブログから。

2025'01.19.Sun
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2006'08.12.Sat
「…またわかりやすい拗ね方ね」

「ほっといて下さい」



部室の隅で膝を抱えていた笠井は顔を上げた。ふくれっ面に中西が思わず吹き出すと、更に機嫌を損ねたようで、また膝の間に顔を埋める。



「大丈夫よ」

「……」



中西が肩を叩いて出て行く。静かになった部屋でひとり、宙を見つめて溜息を吐いた。こんなつまらない嫉妬、しなくてもいい余裕がほしい。



ドアが開いた。中西が戻ったのかとそっちを見た笠井は後悔する。



「見つけた」

「…もうハーレムは堪能できましたか」

「あのなぁ…」



三上はドアを閉めながら、呆れた表情で笠井を見た。その息は荒い。意識して三上から顔を逸らす。



「…怒ってませんからね」

「嘘つけ」

「…好きな人いるってぐらい、言ってくれてもいいじゃないですか」

「……お前そんな可愛いキャラだっけ?」

「土下座して謝って下さい」

「ああそういうキャラだよお前」



部室に大きく、鍵を閉める音が響いた。笠井が肩を揺らしたのも無視して三上が近づいてくる。膝を抱える手に力を込めて、目を閉じた。
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2006'08.10.Thu
強い思いと共に、脱力感に襲われてしゃがみこんだ。夏の終わりをこの体で実感する。



「負けたのか」



それは黄金世代の終わりだった。



試合から戻った部員たちを襲ったのはひどい疲労だった。目指した優勝旗は彼らを見限り、目前で身を翻した。



「短い夏だったな」

「ほんとにねぇ」



渋沢の隣で中西が煙草に火をつけた。すんげーシュール、誰かが呟く。寮の屋上、今日ばかりは無礼講なのか、渋沢までが足を投げ出して夜空を眺める。



「…よく帰って来れたなぁ…」

「立てなかったもんな」

フェンスにもたれてしゃがみこんだ近藤は、まだ動揺がおさまらないのだろう、呆けた表情をしている。中西がわざと吹きかけてくる煙を払って顔をしかめた。国家遺産の前で煙草やめろよ、三上が茶化す。その声にも疲労が見えた。



辰巳が屋上へ上がってきた。人数分のペットボトルを抱え、ひとりずつに配って行く。無言だった。



「…藤代が泣いてるぞ」



三上が膝をついた。フェンスが揺れる。金属がこすれる音が続く。



「…終わりかぁ」



思ってたより早かった。夜風が彼らを撫でていく。
2006'08.08.Tue
ありえない。談話室をのたうち回る近藤を、中西は黙って眺めた。パピコの片割れを食べてくれる人間を探していたら、唯一見つけたのが近藤だったのだが、とても声をかけられない。とりあえずひとつを食べながら、悶絶する近藤を眺める。



「声かけろよ!どうしたって聞けよ!」

「ドウシタノ近藤クン」

「やっぱウゼー!」

「注文多いなぁ」



まぁまぁ食べなさいよ、アイスを渡して中西はソファーに腰を落とす。隣に座り込み、近藤は溜息を吐いた。



「……お前、よく平気だな」

「ンなわけないじゃん。俺が機嫌悪いの知っててみんな部屋から出てこないんだから」

「……あの」

「笠井もバカだよね、俺を捨てて三上に走るなんてさ」



さっさと空にしてしまったアイスの容器を噛んで、中西は不満を訴える。

夏休みの中の本当の夏休み、実家へ戻っている間に笠井は人のものになっていた。一方、近藤からしてみれば、帰省中に友人が後輩とつき合うことになっていた。関係者は全員────男。



「…ありえねぇ…」

「俺の方がありえないよ、あと一歩で陥落だったのにさぁ」

「聞きたくない…」



ありえねー。近藤は頭を抱える。



「ただいまー…何で無人なんだ?」

「さぁ…」



帰ってきたのは渦中の人物。談話室を覗いたふたりを近藤たちは睨みつける。



「三上こっちきて正座しろ!」

「笠井は部屋帰ってなさい!」

「えっ!?」

「何でお前らそんな怒ってんの!?」

「「いいから!」」



こんなにこっちが苦しむのだから、幸せになってもらわなくては困るのだ。
2006'08.06.Sun
「あ、上履き持ってきてねー」



靴下のまま藤代は校舎へ入っていく。部活終わり、暑さに耐えかねて裸足になっていた笠井は一瞬迷い、結局スリッパを取ってきた。汗をかいた足に、学校の廊下は不快すぎる。スリッパも似たようなものではあるが、まだましだ。



忘れ物した、と藤代が気付いたのは、夏休みも半分ほど終わった頃だった。笠井は一生このことを忘れない。だって、課題である「夏休みの友」を忘れるとか。小学校の頃のワークのようなものではなく、プリント数十枚に及ぶ数学の課題のことだ。あれを忘れるとは、勇者と呼ぶしかない。



昇降口から入ってすぐの階段を上がって教室へ。めんどくせぇなぁと笠井がぼやいた瞬間、藤代が視界から消える。



「…び…びびったぁ…」



視線を落とすと前後に開脚した藤代がいて、何してんのと思わずバカにする。



「滑ったんだよ!」

「…あー、ワックスかけたもんなぁ」



終業式に行われる魔のワックス掛けをくじによりみごと引き当てていた笠井は顔をしかめた。あれは酷い運動だ。



「ちょっとこれおもしれえ」

「は?」



次の瞬間に藤代は無人の廊下を走り出した。笠井が止める間さえ与えない。



「…バカだなぁ」



そんなことしてる暇があれば、少しでも「夏休みの友」と仲良くするべきだ。なんたって毎日半ページやっても夏休み中には終わらないという量なのだから。



結局しりもちをつくまでは簡易スケートは続けられることになる。
2006'08.04.Fri
転び回って砂埃にまみれたお前を見てると安心するよ。なんて言ったらもの凄く軽蔑した目で見られた。ほんとにむかつくなお前。好きだけど。



「イッテー」

「うわ、また傷増えてんじゃん。小学生かよ」



椅子に座った誠二の足元にしゃがみ、思わず溜息を吐く。こりないなぁ。

見かねたキャプテンが作ってくれた「藤代専用救急箱」は、何故か使用者は俺になっている。自分でやれ、自分で。



「絶対あと残るよ」

「別に女じゃないし、勲章勲章」

「それは名誉の負傷の場合だろ、お前転ぶだけじゃん。…綺麗な脚なのに」



治療を済ませた脚をつ、と指先で撫でてやる。一気に硬直した誠二を見上げて笑ってやれば、次の瞬間には部屋を飛び出した。トップレベルの俊足に追いつくつもりはないけれど、俺もすぐさま走り出して後を追う。



だからこりないねって言ってんのに。そんなに触らせたい?お望みなら余すとこなく隅々まで触ってあげるよ。



な〜んて俺の思考はきっとあいつにとってはだだ漏れで、だからこそ狭い廊下をグランドのように抜けていく。



そして誠二は何もないところですっころんだ。その隙を見逃さずにそれに飛びつく。



「ぎゃーっ!」

「オーイ、また笠井と藤代がいちゃついてんぞ〜」

「お前ら廊下でやめろよな〜」

「先輩助けろよッあっうわっまさぐられてる!ぎゃーっ!」

「笠井」



そっ、と優しい手つきで中西先輩が鍵を差し出してくれた。自習室の鍵だ。傍観者の三上先輩が爆笑している。



「先輩大好き」

「ばかーッ!」



暴れる誠二を一緒に押さえつけてもらって、先輩と自習室に放り込む。鍵をかけて、逃げる誠二を角に追い込んだ。



「タク!」

「ちょっとだけ」



しがみついて膝の上に体を預ける。今度は誠二が溜息をついた。薄暗い部屋。



「今度は何」

「…ちょっとしたつまづき」



膝舐めたらどうする、と聞いたら突き飛ばされて、転びそうな走りで逃げられた。
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